今回は、ソシオニクスを理解する上で重要な8つの要素(情報要素)から、「内向論理」を解説していきます。「内向論理」とは、モノとモノの間の客観的な関係を捉える見方で、ルールやシステムの制定などに役立ちます。
8つの要素の「内向論理」とは?
8つの要素は、情報要素(information elements)とも言い、それぞれのソシオタイプのものの見方の違いを理解する上でとても重要です。
今回は、「内向論理(Introverted Logic)」について解説します!
なお呼び方はさまざまあり、特にネット上の性格類型ファンコミュニティでは、MBTIと揃えて「内向思考」、それを略した「Ti」と呼ぶことも多いです。
内向論理とは?
内向論理は、モノとモノ(あるいはコトとコト、ヒトとヒト)の間の客観的な関係にかかわっています。モノの比較や分類をするときには、モノとモノの間に一定のルールが必要です。その一定のルールを理解したり作り出したりするのが、内向論理のはたらきです。
こういう頭の使い方・考え方をするときは、あなたの中の内向論理がはたらいているときです!
内向論理のキーワード
構造、分析、一貫性、言行一致、説得力、合致、見合うこと、共約可能性、理解、秩序、あるいはその欠如
内向論理のシンボルマーク
内向論理のシンボルマークは、白抜きの四角形(□)です。四角形はカッチリ決まった「論理体系」を、白抜きは「主体内部の空間」=「内向」をあらわします。
内向論理のバリエーション
内向論理の強弱
どのタイプも内向論理を通した見方・考え方をします。ただしそれを得意とするタイプと、苦手とするタイプがいます。得意か苦手かは、当ブログでは強弱であらわし、以下のようになります:
内向論理の強さ | タイプ |
---|---|
★★★★(強い) | 内向×論理型(LII、LSI、ILI、SLI) |
★★★☆(やや強い) | 外向×論理型(ILE、SLE、LIE、LSE) |
★★☆☆(やや弱い) | 内向×倫理型(SEI、IEI、ESI、EII) |
★☆☆☆(弱い) | 外向×倫理型(ESE、EIE、SEE、IEE) |
内向論理が強いタイプ(例:LII)は、物事のシステム・ルールをすぐに理解します。逆に、内向論理が弱いタイプ(例:IEE)は、ルールにどうしても従いたくなかったり、一貫性のない行動を叱られたりして、苦労した経験があるかもしれません。
モデルA×内向論理
さらに詳しく。各タイプが内向論理をどのように使っているかは、モデルAの8つの機能のうち、どこに内向論理があるかで決まります。
モデルAは、ソシオニクス創始者のアウシュラ・アウグスティナヴィチューテさんが発明したモデルです。このおかげで各タイプの性格の違いや、考え方のプロセスをシステマチックに考えることができます。
機能ごとに、強弱(得意か苦手か)や価値(好きか嫌いか)が決められています。
表にまとめるとこの通りです:
自我ブロック×内向論理
モデルAの1行目は自我ブロックです。そのタイプの個性やアイデンティティをあらわす部分です。自分でも上手に扱うことができ、価値を感じており、意識しています。
自我ブロックには、主導する機能(第1機能)と創造する機能(第2機能)があります。
主導する機能×内向論理:LIIとLSI
主導する機能×内向論理は、LIIとLSIです。彼らにとって論理的な正確性は最大の関心であり、アイデンティティです。
模範的な彼らの内向論理が以下です。
主導するTiをもつ彼らは、論理を通して現実を眺めており、物事の正確性と妥当性をすぐさま認識し、現実そして自分の見方と行動のシステムの中に物事をうまくはめこみます。新しい情報や体験について、論理的な主張を自由に―しばしば誇張をまじえて行います。例外のない法則をもっとも高尚なものとしており、それが共同体の規則であろうが自分の法則であろうが、もしくは他人のルールであってもいいのですが、一連の法則に従わない人や物に対してはいつも批判的です。他人のルールを採用することはできますが、最終的な決定は自分の法則に基づいており、自分の法則を常に洗練させています。
当たり前の基準が高いので、しばしば「厳しい(=面倒臭いdemanding)人」と思われます。
Introverted logic – Wikisocion
たとえ面倒臭い奴だと思われようが、例外のない網羅的な法則・体系をもっとも重視します。
創造する機能×内向論理:ILEとSLE
創造する機能×内向論理は、ILEとSLEです。論理的な一貫性や体系を重視します。
自分が経験したり学習したりしてきた一連の現象を説明するため、論理体系化や公式化を簡単に行います。しかし、この論理体系あるいはそれに基づく説明は、永久的でもなければ包括的なものでもありません。新しい経験や情報が加えられれば変わることもありますし、アッサリ切り捨てられることすらあります。
Introverted logic – Wikisocion
ただし、LIIとLSIほど、自身の持っている体系を絶対視しません。この2タイプの体系は変わることもあるし、すべてを説明できるような完璧なものでもありません。
超自我ブロック×内向論理
モデルAの2行目を超自我ブロックと言います。義務感や社会規範にかかわります。価値を感じないし苦手意識が強いですが、見栄を張ったり褒められたがったりします。
超自我ブロックには、規範の機能(第3機能)と脆弱な機能(第4機能)があります。
規範の機能×内向論理:ESIとEII
規範の機能×内向論理は、ESIとEIIです。
短時間なら私情を挟まない学術的・理論的な見地からものを語ることができますが、その様子は極端に衒学的で、緊張しがちです。Fiの判断によって決めたことを論理で正当化しなければならないと感じると、一応努めはするのですがすぐにイライラしてしまい、特に論理の矛盾を指摘されたときにはイライラが顕著にあらわれます。そうなると、倫理的な動機を説明するか、あるいは完全にその話題を避けるかします。
Introverted logic – Wikisocion
自分の判断について、論理的に一貫しているか(矛盾がないか)という観点から確かめることに苦手意識があります。そのため論理的な説明を強いられると、ピリピリしやすいです。
脆弱な機能×内向論理:SEEとIEE
脆弱な機能×内向論理はSEEとIEEです。ESI・EII以上に、内向論理の見方に対しては拒否感をあらわにします。
理論的な知識という根拠を完全に拒絶するかあるいは鵜呑みにしてしまうかの両極端ですが、そういった根拠やそれに対する自分の執着については明らかにすることを好みません。
Introverted logic – Wikisocion
この2タイプに「理論武装」という言葉は似合いません。論理的に一貫するかどうかの判断に苦手意識を感じやすく、そうした観点からの判断を一切拒絶するか、逆に人の判断を鵜呑みにしてしまうかの両極端になりがちです。
自分が取り扱う理論的なカテゴリーの数を制限するのを好みます。また、最終的に自分の経験から自分にとって必要であると判明するまでは、新しい用語やシステム、規則を、恣意的で不要なものであると見なす傾向があります。
同上
自我ブロック×内向論理のタイプが、新しい理論をどんどん受け入れて自分のシステムに取り込んでいくのとは対照的に、SEE・IEEは、新しい理論を「恣意的で不要なもの」とみなし、必要性がはっきりするまでは受け入れたがりません。
時間を与えられればはっきりと自分の価値観を表現することはできるかもしれません。しかし、自分の価値観に食って掛かったり、議論や論争に引き込もうとしたりする人を対処する術を持っていません。こういうわけで、自分の考えが正しく徹底的に支持できるものだと強く確信できるまでは、議論を挑んでくる人に対して、新しい決定や意見をなかなか公表したがらないのです。
同上
繰り返すように、この2タイプは「理論武装」がほとんどできません。つまり、議論をふっかけられると、自分の判断を擁護することができなくなります。そのため、確信が持てるまでは、自分の判断を公表しないようにするのです。
超イドブロック×内向論理
モデルAの3行目を、超イドブロックと言います。無意識で苦手だけれども価値を感じていることなので、何でも鵜呑みにしたり人任せにしたりしやすい部分で、自分の望みや自己実現にかかわります。
超イドブロックには、暗示される機能(第5機能)と動員する機能(第6機能)があります。
暗示される機能×内向論理:ESEとEIE
暗示される機能×内向論理は、ESEとEIEです。この2タイプは特に強い内向論理への憧れがあります。
体系立てて物事を見ることが得意な人々を大いに尊敬します。直接には関係しない背景知識をたくさん持っていることよりも、概念を明確で簡潔に説明できることを特に好みます。自分の行動が意味のあるものであってほしいと思っているので、行動の背後にある概念的な理解が正しいことを誰かに保証してもらう必要があります。確証が得られない場合には、混乱して、まったく理性的に動くことができなくなってしまいます。
Introverted logic – Wikisocion
自分の行動が一貫しているのかあるいは矛盾しているのかを、自分ではほとんど判断しません。そのため混乱した行動をとりがちですが、その分、論理的に物事を捉えて説明することができる人を尊敬します。そういう人から、自分の行動が「考えなし」のものではないということを保証してもらいたいと思っています。
動員する機能×内向論理:SEIとIEI
動員する機能×内向論理は、SEIとIEIです。
信念と理解を明確に体系だてようとし、新たな概念を抱いたり新たな概念や思考体系が紹介される哲学的議論に参加したりすることを楽しみます。この人たちは、自分の行動の背後にある論理がはっきりとは自覚できていません。だから哲学的議論の中である程度の理性的能力を身につけるべく外界の助けを求めるのです。どちらかといえば目的達成の手段として、自分の最大の目的へと至るための補助線として、構造を必要とします。
Introverted logic – Wikisocion
ESEとEIEと同様、この2タイプも、自分の行動の一貫性や矛盾をはっきりと自覚していません。そのため、他者の力を借りて哲学的な思索や議論を行い、自分の判断を論理的に説明しようとします。
他方、彼らが求める論理は、あくまで「手段」や「補助線」。論理的であること自体は目的ではありません。
イドブロック×内向論理
モデルAの4行目を、イドブロックと呼びます。自分の基盤や防衛本能にかかわる機能です。扱いは得意なのですが、大した価値を感じておらず自覚も薄いです。
イドブロックには、無視された機能(第7機能)と証明する機能(第8機能)があります。
無視された機能×内向論理:LIEとLSE
無視された機能×内向論理は、LIEとLSEです。
アイディアやシステムの持つ論理についての議論は、内容は簡単に理解できるのですが、基本的に興味がありません。そういった論理構造は、目標達成にはほとんど価値のないことだと受け取っており、まったく面白くない上に生産性もないことであると感じています。
Introverted logic – Wikisocion
論理的に一貫しているかどうか(矛盾がないか)は、彼らにとっては、まったく面白くない上に、目標達成にかかわらない非生産的な観点であるとうつります。
証明する機能×内向論理:ILIとSLI
証明する機能×内向論理は、ILIとSLIです。LIEとLSE以上に、論理をめぐる議論を得意としながらも軽視します。
この人たちは、主張と前提を突き崩してそこに論理的な欠陥があることを示しながら、他人の見方を論理的な観点から批判することが多いです。しかし過度に批判しようとはしませんし、現実がきれいな論理で正確に表現できるとも思っていません。
Introverted logic – Wikisocion
この2タイプは、他人の判断が論理的に矛盾していれば批判を行います。しかし、LIIとLSI(主導する機能×内向論理)とは違い、そもそも現実を1つの完全なシステムに落とし込めるとは考えいません。
自分の内向論理をチェック!
質問に答えてみよう!
自分は内向論理をどれくらい使っているかセルフチェックしてみるのも楽しいですよ。以下はYermak(School of Systemic Socionicsの設立者)の質問集を訳したものです。ぜひセルフチェックに活用してみてください。
Анкетирование и требование к вопросам | School of System Socionics
- 「一般から特殊へ」とはどういうことでしょうか? 「特殊から一般へ」とはどういうことでしょうか? 例を挙げてください。
- 「論理的である」とはどういうことでしょうか? あなたはどう理解していますか? あなたの「論理的」の理解は、一般的に受け入れられた理解と一致していますか? 論理的であることは簡単なことですか?
- 「階層」とは何でしょうか? 階層の具体例を挙げてください。階層には従わなければいけないのでしょうか? その理由は? 階層システムの具体例を挙げてください。それはどんなものですか?
- 以下の課題から1つ自由に選び、具体的に回答を説明してください。あなたが選んだものを説明してください。
- 「カトラリー」と「スプーン」という言葉にはどういう関係がありますか?
- AがBではなく、かつBはCではないとしたら、AはCである。これは真ですか? なぜ? AがBと等しくなく、かつBはCと等しくないとしたら、AはCと等しい。これは真ですか? なぜ?
- 以下から1つを選び、分類してください:①音楽のジャンル、②乗り物、③税、④燃料、⑤動物
- 「分類」とは何でしょうか? 分類はどのように行われるのでしょうか? なぜ分類は必要とされるのでしょうか? どこで分類は使われるでしょうか? 例を挙げてください。
- 「『野菜』は、私たちの目の前にあるものではない。なぜなら『野菜』は何千年も前から存在していたからであり、したがって、私たちの前にある野菜は野菜ではない」(ディオゲネス) 論理的な誤りを見つけてください。
- ソクラテスの有名な言葉「私は私が無知であることを知っている」を分析してください。これは論理的でしょうか?
- あなたの中で情報を構造化したい欲求がよく沸き起こりますか? どんな目的のため? 一般的には情報の構造化はどのように行われますか? あなたはどのように情報を構造化しますか?
おまけ:管理人の回答
管理人IEIの回答(一部)を挙げておきます。自分で回答したあと、見比べてみると新たな発見があるかもしれませんね。
なおIEIの場合、内向論理は動員する機能。やや弱い機能ですが、価値を感じている機能です。自分のどの機能に内向論理があるかによって、以下の管理人の回答の受け取り方は異なるはずです!どうかお手柔らかに…。
「一般から特殊へ」とはどういうことでしょうか? 「特殊から一般へ」とはどういうことでしょうか? 例を挙げてください。
「一般から特殊へ」は「ソシオタイプから個人へ」みたいなやつ。ソシオタイプの特徴を個人にあてはめる。「IEIは前向きです」が真なら、IEIの人はみんな前向き、みたいな。
「特殊から一般へ」は「個人からソシオタイプへ」。IEIのAさんは前向き、IEIのBさんは前向き、IEIのCさんも前向き、IEIのDさんも(以下略)…ゆえにIEIは前向き!的なやつ。
「階層」とは何でしょうか? 階層の具体例を挙げてください。階層には従わなければいけないのでしょうか? その理由は? 階層システムの具体例を挙げてください。それはどんなものですか?
階層は、全体から部分へと枝分かれしていくやつ。生物の資料集にあった類とか科とか分かれている図。あるいは会社の組織図。そこに自分が属していたいなら従わなければいけない。「郷に入っては郷に従え」的な。不服があって、属していたくないなら従わなくてもいいのではとも思うけど、代償はあるだろうなとも。
階層システムは、たとえば会社の部署とか。組織が組織として安定的に機能するために必要な分業の仕組み。
あなたの中で情報を構造化したい欲求がよく沸き起こりますか? どんな目的のため? 一般的には情報の構造化はどのように行われますか? あなたはどのように情報を構造化しますか?
よくやりたくなるし、このブログ自体がそれ。ただ、途中でグチャグチャになって挫折しがち。目的は、わからないことを頭の中で整理するため。あるいは相手にスムーズに話を伝えるため。一般的には図にするのかなぁと思う。フロー図とか相関図とか。私もそうする。
「みたいなやつ」でしめるボヤッとした説明。ことわざの引用、「従わなければいけない」と断言しつつ、個人的な基準で「従わなくてもいい」とするカンジ。だいぶ動員する機能らしさのある回答になったんじゃないかなぁと思います。