ソシオニクスのモデルAで8番目の機能にあたるdemonstrative(background) functionですが、ひどい意訳ではありますが「禁じられた機能」とするとわりとしっくりくるなぁと気づきました。今回はこの機能を中心に、偶数番目の機能について論じていきます。
「禁じられた機能」
モデルA | |||
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意識 | 自我 | ①主導する機能 | ②創造する機能 |
超自我 | ④脆弱な機能 | ③努力する機能 | |
無意識 | 超イド | ⑥導入する機能 | ⑤盲点の機能 |
イド | ⑦制御された機能 | ⑧禁じられた機能 |
8番目の機能であるこの「禁じられた機能」は、イドに属し、無意識ブロックの中では最も強烈な機能になります。無意識の王者です。
イドは、まあすごく雑に言うと、動物的本能とかそんなやつで、私たちを度々誘惑してくる悪魔的な存在です。私たちは、そんなイドを日々制御しながら、社会生活を営んでいるのです。イドを放し飼いにしてしまえば、私たちはすぐに社会から追放され、破滅してしまうからです。
参考:
禁じられた機能は、同じイドブロックの7番目の機能(制御された機能)よりもさらに厳しく制御されています。それは、この禁じられた機能が最も強烈な機能であることの裏返しです。
誰も破ることができない規範は、規範として成立しません。「人を殺めてはいけない」という決まりがあるのは、人を殺めることが潜在的に可能だからです。また、誰も破りたくない規範もまた、規範として成立しないでしょう。一部の文化に「自殺してはいけない」という規範があることは、「自殺したさ」が確かに存在しているということを物語っているのです。それと同じ理由で、禁じられた機能は禁じられるのです。人を突き動かすほどの強いエネルギーを秘めているからこそ、それを食い止めるための強い禁止の魔法がかけられているのです。
あなたと同じなら私は許される
モデルAは、意識と無意識の間において、まるで水面にうつっているかのような対称性を持ちます。つまり、無意識の機能は、内向/外向が反転した形で意識にあらわれます。
LII(INTP)のモデルA | |||
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意識 | 自我 | ①内向T | ②外向N |
超自我 | ④外向S | ③内向F | |
無意識 | 超イド | ⑥内向S | ⑤外向F |
イド | ⑦外向T | ⑧内向N |
ここから、2番目の「創造する機能」は、禁じられた機能の「うつし」を他人の中に作り上げる機能なのだろうと考えました。つまり、禁じられた機能は自分のうちにその存在を許されていないものです。創造する機能は、他人のなかに「うつし」を創造してそれを許すことによって、間接的に禁じられた機能を許そうとする機能なのです。防衛機制の投影とは、まさにこういう原理なのかもしれません。
これはある意味で利他的な営みになりえます。禁じられた機能は単独では存在を許されませんが、他人の中のうつしを許すことができれば、間接的に自分のそれをも許したことになるからです。つまり、「あなたと同じなら許される」のです。たとえばLII(INTP)の禁じられた機能は、内向N、そのうつしである創造する機能は外向Nですが、予定された運命に身を任せることは許されない(内向Nの禁止)という前提があるからこそ、他人にも自分と同じ運命を見出し、その存在を許し尊重してやることで、間接的に自分の運命を許そうとするのです(外向Nへのうつし)。
しかし、創造する機能は、あくまで禁じられた機能の代用にすぎません。だからこそ、創造する機能は、使いすぎたり、他人から強制されたりすると、ストレスを感じて運転をやめてしまいます。創造する機能が許すことをやめると、禁じられた機能が、今にもその禁忌を破って、暴走しようとします。「誰か自分の運命を許してくれ」と。
あなたは私ではない、私は私が引き受ける
自分の禁じられた機能は、他人の中にうつしを見出せたときに限って許されます。ということは、他人の中にうつしを作り出すことがどうしてもできないとき、自分自身が他人のうつしになろうとすることがあります。IEI(INFJ)を例とするなら、他人の感情を自分にうつすことで、表面的には「あなたと同じ感情なら許される」が実現します。しかしその裏で、本当の自分の感情はますます否定されていきます。「あの人が嬉しいなら私も嬉しいはず、なんだか落ち込む気がするけど…まぁ気のせいか」――こうやって、無意識のうちに禁止の魔法を強めていってしまうのです。
だからこそ、他人のうつしを拒絶する手段を持つことが必要になってきます。それが、6番目の「動員する機能」です。禁じられた機能の代わりを、創造する機能は他人の側に見出しましたが、この動員する機能は自身で代わりを引き受けることになります。
モデルA(INFJ) | |||
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意識 | 自我 | ①内向N | ②外向F |
超自我 | ④外向T | ③内向S | |
無意識 | 超イド | ⑥内向T | ⑤外向S |
イド | ⑦外向N | ⑧内向F |
IEI(INFJ)の動員する機能は、内向Tです。確かに私は用事を断る時に「お金がないので無理」「忙しいので無理」というように、「無理」という言葉を使いがちなんです。いつも行けない理由を探しています。それは禁じられた「イヤだ」の代わりなのかもしれません。
私の知らない本当の私
禁じられた機能は、個人の世界観を背後で形成するので、英語ではbackground functionと呼ばれています。ここから私は最近、禁じられた機能とは、自分には見えないが、他人にはわりとよく見えているものなのではないかという説を考えています。
先のように「○○なので無理」と断っていたら、「行きたくないから嘘吐いてるんでしょ」と指摘されたことが何度かあります。私は決まってこう答えていました。「行きたいなぁとは思ってるんだよ」。これが本当に本当の本心だと信じていますから、行きたくないから嘘を吐いただなんてひどい誤解を受けたものだと思いました。しかし今回、禁じられた機能について考えていくうちに、この「行きたい」は他人の感情のうつしでしかなくて、「行きたくない」が本心なのかもしれないと考えるようになりました。だってIEIにとって「行けない」は「行きたくない」の代わりなのですから。ここまでしてやっと理解できた自分の感情が、他人からは丸見えだというのは恐ろしい…。
私を禁じるのは何か
ここまでで、8番目の禁じられた機能、2番目の創造する機能、6番目の導入する機能を紹介しました。最後は、4番目の「脆弱な機能」を説明して終えたいと思います。
IEI(INFJ)のモデルA | |||
---|---|---|---|
意識 | 自我 | ①内向N | ②外向F |
超自我 | ④外向T | ③内向S | |
無意識 | 超イド | ⑥内向T | ⑤外向S |
イド | ⑦外向N | ⑧内向F |
これは、禁じられた機能を禁止している魔法そのものです。この脆弱な機能は、もっとも苦手としている機能ですが、禁じられた機能を禁止するのに精いっぱいで、それ以上のことにはとてもじゃないが手が回らないのかもしれません。仮にこの機能を上手に使いこなせるなら、他人の中にうつしを立てる必要も、自分の中に他人のうつしを立てる必要も、さらに自分と他人が別であると理解する必要もなくなるわけですが、それができないから人間なんでしょう。人間には魔法は使いこなせいのです。
ソシオニクスの基本的な解釈は: