ソシオニクスについてブログを書いていると、MBTIとの違いを感じたりあるいは読者の方に指摘されたりすることがあります。今日はMBTIとソシオニクスの違いについてじっくり検討していこうと思います。あと更新が途絶えてしまいすみません。
MBTIとソシオニクスの違いとは?
MBTIとソシオニクスの違いのいくつかについては、2年ほど前、ソシオニクスについて初めて触れた記事で簡潔にまとめています。
ここでは、MBTIのモデルでは扱われない要素がソシオニクスのモデルAでは説明されることや、相性(※現在、私は間柄と呼んでいます)がはかれること、タイプの表記が異なることを挙げています。
しかしそれ以外にもMBTIとソシオニクスには様々な違いがあるようです。これについて表にまとめられているものがありましたので、訳してみます。
MBTIとその派生(Keirseyなど) | ソシオニクス |
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ユングのタイプディメンションに加えて、J/Pと呼ばれる新たなディメンションが導入されている。 | j/pはユングの合理/非合理というディメンションと完全に一致している。 |
タイプは静的なものとして、すなわち、4つのディメンションによって、あるいは機能のモデルによって描かれる。 | タイプは、動的なものとして、すなわち、異なる状況下ではいわゆるモデルAにしたがって変化するものとして描かれる。内向型のタイプのモデルAはMBTIの機能のモデルとは異なっている。 |
タイプの説明は行動に焦点を当てる。 | タイプの説明は動機や考え方の特徴に焦点を当てる。 |
個人間の関係とタイプ間の関係には、相いれない異なる理論が存在する。すべての関係は対称的なものである。MBTIを支持する人の多くは、タイプ間の関係の理論を全く認めない。 | モデルAをベースにした関係性の一定の理論が存在しており、それによって関係性の発展を予測することができる。いくつかのタイプ間の関係は、非対称的である。 |
「ポリティカリーコレクト」*である。何よりもまずタイプはそのタイプがもつ強みを通じて描かれる。(弱みを描くことは「ポリティカリーインコレクト」とみなされる) | タイプは強みも弱みも両方描かれる。弱みに起因するノイローゼが考慮されている。これらの弱みこそが、相互依存や異なるタイプ同士の相互作用を説明し、タイプ間の関係の理論を築くために役立っている。 |
検査が、タイプを発見するための主要な方法である。実際、数百万人がすでにMBTIやMBTIベースの検査(Keirsey Temperament Sorter、Murphy-Meisgeier Type Indicator for Chlildrenなど)を受けている。 | 検査は、使われるとはいえ、不十分でいつも信頼できるわけではないと考えられている。観察、聞き取り、外的なデータなどのような、医学に似た方法がより広く使われている。しかし、ソシオニストたちは、いくつかの有名サイトで「ソシオニクスのノウハウ」として誤って伝わっている”visual identification”は秀でていない。 |
タイプの数は16個に制限されている。 | サブタイプ(32個以上)やそれらの関係性も同様に研究されている。 |
*西側の読み手には、なぜまさしく「ポリティカルコレクト」という用語やそれにかかわるあらゆるものが、ロシア人に否定的な反応を強く引き起こすのかを理解するのは、おそらく簡単なことではないだろう。しかし説明するのは簡単だ。何年もの間、ロシア人はイデオロギーの領域では選択肢を持っておらず、あらゆる出版物が検閲にかけられてきた(1917年までは「キリスト教的価値観」に従うため、そしてその後は「共産主義の道徳」に従うためである)。アメリカ的な「ポリティカルコレクト」はやや異なる道徳規範に基づくものではあるが、ロシア人には公共用の偽善として(誤って?)受け取られることが多いのである。
出典:SOCIONICS: Personality Types and Relationships
このうち特に私が気になったのは、①タイプが静的か動的かというタイプ観の違い、②説明がポリコレかどうかという政治的スタンスの違い、③どうタイプを確定するかという方法の違いでした。長くなってしまいそうなので、今回は、①タイプが静的か動的かというタイプ観の違いについて、次回の記事では②と③について、順に考えていこうと思います。また、表では「MBTIとその派生」となっていますが、今回はMBTIだけに限定することとします。
タイプ観の違い
上の表によれば、MBTIのタイプは静的であり、ソシオニクスのタイプは動的です。MBTIではタイプが使用する機能はおおむね一貫しているのに対し、ソシオニクスではタイプは状況に応じて使用する機能を変えるということでしょうか。以下ではMBTIのタイプダイナミクスと、ソシオニクスのモデルAについて考察していきます。
MBTIのタイプダイナミクス
MBTIにはタイプダイナミクスという考え方があります。それは簡単に言えば、主機能→補助機能→第三機能→劣等機能の順で機能を使うよということです。真っ先に使われる主機能は子どものうちから上手に使うことができますが、滅多に使われない劣等機能は中年期になってようやく意識され始めることが多いようです。
たとえばESFPなら、主機能Se→補助機能Fi→第三機能T→劣等機能Niの順番に情報を収集・判断します。具体的には、ESFPはまず、目の前の状況(Se)をよく見て情報を収集します。次に、そこで得た情報を自分の感情(Fi)に基づいて整理し結論を出します。これがESFPの基本です。しかし自分の感情で決めかねることは往々にしてあります。こういうときには、新たに客観的な正しさ(T)という基準を採用することになります。さらには、目の前の状況からだけではどうにもならないような事態も起こってきます。こういうときには、慣れない未来予測(Ni)をして情報を集めるしかなくなります。
『MBTIタイプ入門:タイプとストレス編』では、劣等機能にとらわれた状態のESFPが幼稚なINTJに見えることがあるということが書かれています。とはいえMBTIのタイプダイナミクスは、状況に応じて使う機能と見せる顔をころころ変えるという発想をとっているわけではないでしょう。
ソシオニクスのモデルA
一方ソシオニクスのモデルAは、別の考え方をします。もちろん使う機能に優先度はあり、つまり使いがちな機能や滅多に使わない機能というものも存在してはいるのですが、各機能はそれぞれ別の役割を果たすものと考えられています。主導する機能(1st)は自分に向けて、創造する機能(2nd)は相手に向けて、規範の機能(3rd)は社会に向けて使われますし、制限された機能(7th)や証明する機能(8th)は身の危険が起きたときに使います。
たとえば、ESFPと対応するタイプであるSEEは、仲良い人たちに囲まれて安らいでいるときには真にSEE(Se+Fi)らしいです。十分に自分らしく(1stのSe)人とかかわっている(2ndのFi)からです。しかしよく知らない人たちの前では、IEE(Ne+Fi)らしく可能性を探ろうとするかもしれません。それは自分らしさ(1stのSe)よりも社会規範(3rdのNe)を意識するためです。あるいは警戒心から、ESE(Fe+Si)やSEI(Si+Fe)っぽい無難なコミュニケーションをとることで身を守ろうとすることもあるかもしれません。このように、状況次第で使う機能も見せる顔もころころ変わる、そう考えるのがソシオニクスなのでしょう。
結論:ソシオニクスは複雑で非実用的?
「自己実現を目指す」という観点から考えると、ソシオニクスのモデルAは複雑すぎてわかりづらいというか、それならMBTIのタイプダイナミクスで事足りちゃうよなぁと思ってしまいます。タイプダイナミクスは、モデルAの自我と超イドで構成されていますから。
ただ、次回触れる内容にも関わることですが、ソシオニクスは「弱み」に着目しますから、そういう意味ではMBTIのタイプダイナミクスでは不十分かもしれません。
次回は、MBTIとソシオニクスの②政治的スタンスの違い、③タイプを確定する方法の違いについて考えていきます: